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2.内定者フォローに求められること

(1)内定者フォローの視点

●内定者が持つ「期待」の裏側にある「不安」をいかに解消するか

実際に会社組織で働いた経験がない学生は、就業条件だけではなく、「本当にこの会社でいいのか、自分はやっていけるのか、他にもいい会社があるのではないか」といった漠然とした不安を、就職活動中から内定、そして入社後まで持ち続けている。たとえ自分が希望する会社から内定を得たとしてもそれは同様で、「期待」を持つと同時に、多くの「不安」を抱えている。そういった何とも言い難い不安を解消し、入社に対して前向きな気持ちと自信を持ってもらうことが、採用のミスマッチを防ぐためには非常に重要である。そこに内定者フォローを実施する大きな意味がある。

●三つの不安~「社会人生活」「人間関係」「仕事・キャリア」を払しょくする

内定から入社までの間に学生が抱く不安は、大きく「社会人生活」「人間関係」そして「仕事・キャリア」といった三つのカテゴリーにまとめることができる。これらに対する不安を払しょくするのが、内定者フォローの主な目的である。

【入社前に学生が抱える不安】
1.社会人生活に対する不安 これまで社会人経験のない学生は、この会社できちんと勤められるかどうか、相応の社会人生活を送れるかどうかに大きな不安を感じている。就職活動を通して社会人生活を垣間見たといっても、実際に働いたわけではない。アルバイト経験も、そのほとんどは補助的・一時的な労働力としての位置付けだ。消費者から生産者側、学生から社会人へとうまく気持ちや行動を切り替えができるかどうか。まずはこの不安を解消し、社会人としてやっていくための自信を持ってもらうことが大切である。
2.人間関係に対する不安 会社組織の中で、上司や先輩社員・同僚とうまく人間関係を構築できるか、という問題も大きい。学生時代は、気心の知れた仲間との関係性の中で過ごしてきた。いわば、横の関係の同質的な組織での活動が中心だった。それが一転、組織内外のいろいろな立場の人たちと協働作業を行い、ある時は厳しい競争関係に置かれ、求められる成果・結果を出さなくてはならないシビアな世界へと放り込まれる。特に、近年の「ゆとり教育」で育った世代は、ビジネスにおける人間関係に関して、不安が大きいと言われている。
3.仕事・キャリアに対する不安 近年、経営を取り巻く環境が大きく変化し、グローバル化の進展と共に日本的な終身雇用制度が崩れている。処遇制度も、年功主義から成果主義へと移ってきた。学生も今までのように会社が一生面倒を見てくれるわけではなく、キャリア自律が求められていることをよく承知している。そうした変化を受けて、多くの学生は自分自身がどのようなキャリアを積んでいけばいいのか、これから先に明るい未来はあるのか、そもそも能力的に仕事についていけるのか、といった仕事・キャリアに対する不安を抱えている。内定者フォローでは、このような不安を払しょくさせていく必要がある。

(2)効率的な内定者フォローを実現するために

●内定者フォローを効率化し、人事業務の負荷を下げていく

2016年度卒の採用スケジュールが後ろ倒しとなり、各企業がインターンシップを急ピッチで展開したことで、内定者フォロー策にも影響が及んでいる。現在行われているインターンシップは、大手企業を中心に、事実上、採用活動としての意味合いが強くなっているが、その実施時期は、学生が夏季休暇中である8月が中心。人事・採用担当者からすれば、9月以降もインターンシップ後のフォローアップや、フィードバックなどの実務が続くが、ちょうど内定者フォロー策の時期と重なるため、負荷は大きい。内定者フォローの重要性は分かっていても、十分に手が回らないのが実情であり、内定者フォローを効率化し、業務の負荷を下げることが課題になっている。

●自社都合だけでなく、学生が求める内定者フォローに応える

効率化が求められる中、各企業とも、より自社に適合した(あるいは不足している点を補う)内定者フォロー施策を行う傾向がある。その際にポイントとなるのは、内定者がどんな不安を感じているのかを知り、丁寧にひも解くこと。そして、それを解決していくためにはどんなソリューションが必要となるかを考え、できるだけ早く手を打つことである。学生が受けた内定者フォローと受けたい内定者フォローでの間に、少なからずギャップが存在するからだ。

「2013年卒 マイナビ学生就職モニター調査 7月の活動状況」では、実際に受けた内定者フォローと受けたい内定者フォローのギャップを明らかにしている。学生が受けたいと思っているのにもかかわらず、受けた割合が低かったのは「勉強会・グループワーク・研修」「先輩社員との懇談会」「e-learning形式の通信教育」など。学生からすると、社会人になって必要な知識を事前に身に付け、不安を少しでも解消したいという思いがあるようだ。逆に「提出書類の案内や事務連絡」「内々定者専用のWebサイト」「人事担当者との食事」などは、その必要性を理解できるものの、受けたい内定者フォローとしての位置付けは低くなっている。

【内定者フォローの実施内容(%)】
  受けた
内定者フォロー
受けたい
内定者フォロー
内定者懇談会 68.2 72.1 3.9
先輩社員との懇談会 38.6 55.3 16.7
提出書類の案内や事務連絡 35.6 17.5 ▲18.1
人事担当者との食事 23.9 23.3 ▲0.6
内々定者専用Webサイト 20.9 16.1 ▲4.8
勉強会・グループワーク・研修 15.5 44.6 29.1
社内報などの資料の郵送 11.9 22.0 10.1
研究室、工場など施設
(社内)見学
10.4 21.6 11.2
人事や先輩社員との個人面談 9.3 13.4 4.1
内定者アルバイトの案内 5.3 19.2 13.9
旅行(宿泊有) 2.6 13.8 11.2
通信教育(郵送形式) 1.9 15.5 13.6
e-learning形式の通信教育 1.4 16.0 14.6

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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