
4コマ漫画「オンボーディング」/聞いていいのに聞けない空気
新人が最初につまずくのは、業務の難しさではなく、“周囲の空気”かもしれません。「いつでも聞いてね」と言われながらも、実際には忙しそうで声がかけづらい、質問をするとため息をつかれる。こうした“聞いていいのに、聞けない”空気は、オンボーディング初期の大きな障壁になります。本コラムでは、「言行不一致」や「共感の欠如」といった職場の“ズレ”が、新人の心理的安全性にどのように影響するのかをひも解きながら、職場ができる実践的な関わりについて考えていきます。
┏━━━━━━━━┓
---------目次 ---------
┗━━━━━━━━┛
- オンボーディングと心理的安全性
- オンボーディングに潜む「言行不一致」と信頼のゆらぎ
- オンボーディングに潜む「共感の欠如」と存在意義の揺らぎ
- 心理的安全性を支える言行一致の実践
- オンボーディングあるある4コマ漫画「聞いていいのに聞けない空気」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
1.オンボーディングと心理的安全性
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
オンボーディングの目的は、新人を早く戦力化することだけではありません。本質は、新人が安心して「自分らしく動ける状態」をつくることにあります。そこに欠かせないのが、「心理的安全性」という土壌です。
心理的安全性とは、他者の目を気にせずに発言や質問ができる環境のこと。つまり、新人が受け身にならず、必要なときに必要なアクションを起こせる状態です。近年はリモートワークや多様なキャリア背景を持つ人材の増加により、新人の置かれる状況も複雑になっています。だからこそ「空気に委ねない安全性」を、組織として意識的に築いていく必要があります。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
2. オンボーディングに潜む「言行不一致」と信頼のゆらぎ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
新人の行動は、言葉だけでなく周囲のふるまいから多くのメッセージを受け取っています。「わからないことは何でも聞いて」と言われながら、実際には上司の姿が見えず、先輩からは「まずは自分で考えて」と距離を置かれる…。このように、言葉と行動が一致しない「言行不一致」の状態は、新人にとって「聞いていいけど、聞くな」という矛盾したサインとなります。やがて新人は「今はやめておこう」「自分でなんとかしないと」と行動を控えるようになり、学びの機会や信頼の積み重ねを失ってしまいます。
さらに、「任せるよ」と言われたにもかかわらず、適切な見守りやフィードバックがないと、「期待されている」よりも「放っておかれている」と感じてしまうことも。とくに経験の浅い新人ほど、そうした空気を敏感に読み取り、頼ることすら遠慮するようになります。職場に必要なのは、言葉だけでなく、その裏にある関わりの一致です。信頼関係は、「言ったことが行動に表れているか」で築かれていくのです。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
3. オンボーディングに潜む「共感の欠如」と存在意義の揺らぎ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
業務のやり方を教わることと、「この職場に自分の居場所がある」と実感することは別の話です。新人が本当に求めているのは、「自分の存在が誰かの役に立っている」「この仕事に意味がある」と感じられる経験です。
その感覚を支えるのが、日々の共感や承認のやりとりです。たとえば、「その視点、助かるね」「あの対応よかったよ」という言葉は、自分の行動が価値につながっているという実感を育てます。逆に、「期待している」「歓迎している」と言いながら、実際には無反応で、どんな評価をされているのかもわからない。そんな状況では、自信は育たず、「ここにいる意味がわからない」と感じてしまいます。
共感や承認のないオンボーディングは、形式だけの関わりになりがちです。「自分を見てもらえている」という安心感があってこそ、人は自らの役割に納得し、行動の意味を見出せるのです。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
4. 心理的安全性を支える“言行一致”の実践
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
では、心理的安全性をどう育てていけばいいのでしょうか。答えはシンプルで、言葉と行動を一致させること。
- 「いつでも聞いてね」と言ったなら、実際に声をかけやすいタイミングをつくる。
- 「任せたよ」と言ったなら、必要なフォローや見守りを忘れない。
- 「期待してる」と言ったなら、どこに期待しているのかを具体的に伝える。
これらの「言葉の裏づけ」としての行動が、心理的安全性の土台になります。また、関わる側自身が「本当に伝えたいことは何か」を見直すことも重要です。つい口にしている言葉が形骸化していないか、表情や態度が逆の印象を与えていないか。心理的安全性は、一度言ったから得られるものではなく、日々のふるまいの中での信頼の積み重ねによって築かれます。だからこそ、オンボーディングの成否は、制度やマニュアルよりも、「言行一致」という当たり前を丁寧に実践できるかどうかにかかっているのです。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
5. オンボーディングあるある4コマ漫画
「聞いていいのに聞けない空気」
※ダウンロード資料(PDF版)では漫画の小さな文字もクリアにご覧いただけます。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
![]() |
株式会社エイチ・ティー(HxT) コンサルタント |
---|---|
何のために、なぜここで働き、どうなりたいのかがわかれば、この会社で何ができるかが見えてくる。会社と社員それぞれのビジョンを共に実現しましょう これまで人材紹介、研修企画、人事評価コンサル等、HRサービスに従事。現在は、キャリア自律プログラム「じぶん戦略」の研修提案・運営サポートを担当。その他、"仕事あるある"にまつわる4コマ漫画や"人事課題"に関するトーク動画を制作し発信している |
専門家コラムナンバー
- 4コマ漫画「オンボーディング」/聞いていいのに聞けない空気 (2025-07-03)
- 4コマ漫画で「採用」あるある/あなただから一緒に働きたいんだ (2025-06-02)
- 選ばれるインターンシップとは?(後編) (2025-05-29)
- 選ばれるインターンシップとは?(前編) (2025-05-29)
- 4コマ漫画で「採用」あるある/会社の未来を考えたホントの採用 (2025-05-13)