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「内定者フォロー」の時期

内定者フォローの時期

かつて内定者フォローといえば、10月1日の内定式以降に行うのが一般的だった。内定式まではあくまでも「内々定」であって、正式な内定ではないと考えられていたからだ。しかし、企業が内定出しをする時期は早期化傾向にある。リクルートキャリアの「2020年3月1日時点 内定状況」によれば、2021年卒の2020年3月1日の就職内定率は、15.8%と前年度の8.7%を上回った。放置することは、内定辞退のリスク増大につながりかねない。さらに2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大では、従来のような接触・対面を伴う内定者フォローが難しくなった。加えて、コロナ禍で発生した内定取り消しによる就職留年の動きを受け、学生のより慎重な動きが想定されることから、内定者フォローの重要性が一層増してくる。

ここでは、早期に内々定を出した場合の、約1年間に渡る長い内定者フォローの流れを、それぞれの時期に沿って整理していく。

1)内々定出し期(4月~5月)

この時期は内定者フォローというよりも、入社意思を自社に向けさせる段階といえる。企業の内定出し(内々定含む)開始の山は、キャリタス就活の「2020年卒採用 内定動向調査/2021年卒採用計画」(以降、キャリタス就活の企業向け調査)によれば、4月から6月にかけて。2020年のコロナ禍ではこれまでの売り手市場から買い手市場へ変化する動きもあったが、「キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果(2020年5月発行)」によれば、5月時点での内定率は5割を超え、そのうち就職活動継続と答えた割合は57.9%と、この時期の学生の意思決定は流動的である。多くの学生が複数の内定を得たうえでじっくりと入社する企業を決めたいと考えていることを踏まえた上で、内定者フォローを行っていく必要がある。

昨今の学生は横のネットワークが非常に発達しているため、「他社と扱いが違う」というだけで、不安な状態に陥ることもある。そこで重要なのは、自社の内定者フォローのスタンスと入社までのイベントなどのスケジュールを、この時期にしっかりとアナウンスすることである。また内定承諾まですべてオンラインで進めた場合のフォローも考慮したい。先ほどのキャリタス就活の学生モニター調査によれば、6割以上が内定承諾まで全てオンラインで進むことに「とても抵抗がある・やや抵抗がある」と回答している。個別に対面での面談の機会を設ける、もしくはオンラインでの社員面談や設けるなど、学生が不安や迷いを抱いているか、感じとれるようなコミュニケーションと信頼関係の構築が求められる。

2)内定式まで(6月~9月)

内定者にとっては入社を決断したものの、正式な内定式までには時間がある、いわば空白の時期。キャリタス就活の企業向け調査によれば、6月が内定辞退のピークになる。内定保持しつつ就職活動を行う理由の多くは、「本命の企業が選考中」そして「自分に合っているのかわからない」というものであり、学生の不安を解消しつつ企業理解を深めるための情報提供が望まれる。

この時期学生が望む内定者フォローとは、先輩社員や人事担当者との面談、社内や施設などの見学会というような、より内定先企業との結びつきを感じられるものである。しかし、「週に1回の電話面談」など高頻度の接触は逆に負担ともなりかねない。適切な接触方法・期間で同期の内定者との一体感の醸成などによって、内定者に「入社の決断は間違っていなかった」と思わせる、確認作業を繰り返し行うことが重要だ。

3)内定式後(10月~1月)

正式な内定式を経ることで、学生の入社の意思は固まってくる。すると、今度は入社後しっかりと働いていけるのだろうかという、社会人になることへの不安が募ってくる。

この時期の内定者フォローでは、社会人としての基礎やビジネスマナーなどの入社前教育が大きな意味を持つ。すでに働いている、若手先輩社員の生の声を聞かせるのも効果的だ。いずれにしても、具体的に仕事のイメージがわくような、情報や研修を提供することが重要になる時期である。

4)入社直前期(2月~3月)

目の前に入社が迫ってくると、辞退者を出さないためというよりも、入社後の新人研修にスムーズにつなげるための研修が中心になる。昨今のリモートワーク・在宅勤務の普及も踏まえ、入社後の勤務体制に不安を抱かせないような情報提供が望まれる。それによって、内定者の緊張感を良い意味での集中に変えていく時期といえる。ただし、内定者の中には卒論提出などまだ学業があるため過剰な負担はかけられない。あくまでも、自発的な自己研修の範囲内で行うことが重要だろう。

約1年に及ぶ内定者フォローは、基本的に翌年度の新卒採用のあらゆる業務と同時並行で行わなくてはならない。内定者フォローの専任担当者を置けるような企業はほとんどないため、事前に綿密な計画を立て、業務の効率化を可能にするツールの導入や外部サービスの活用も、視野に入れていくことが重要である。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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